▼日本製線株式会社 代表取締役社長 川添太郎さん ロングインタビュー
Nippon Seisen Cable., Ltd. CEO Taro KAWAZOE
LANケーブルや電流ヒューズなど国内シェアトップクラスのグローバルメーカー
~情報インフラを支える製品を供給し、より生活に便利な社会に貢献しています~
日本製線のLANケーブルは情報化社会のインフラを支える製品
ーより便利な生活、容易に情報が取りやすくなるー
- 日本製線の製品や社会的役割についてお聞かせください。
当社は1938年に創業し、2024年には86周年を迎えます。
現在は、みなさんがインターネットをやられたりするための情報通信用のケーブルやそれに付随するコネクタ類を製造しています。主にオフィスや工場、店舗ができたときにネットワークを構築するためのネットワークケーブルとコネクタ類を市場に供給しています。ほかには電子部品関係、主に電流ヒューズで日系の家電メーカーが主なお客様です。
日本製線の製品はインフラと家電に使われており、みなさまがより便利に生活できるような、容易に情報が取りやすくなるような社会づくりに貢献していると考えております。
コロナ禍でも需要は減らず安定経営、安定供給
ー人と人をつなぐ、人と企業をつなぐ、企業と企業をつなぐ
- LANケーブルはオフィスや工場のネットワークの構築をするために使われているということで、工場が移転するときなどに需要があると以前伺いました。
そうですね。当時も今もそうですが、会社さんが規模を大きくしたり、縮小されたり、統合されたりする際にオフィスのネットワークを構築し直さなければなりません。景気が良くても悪くても、常に注文をいただけるような業態になっております。安定供給にもつながっています。
- コロナ禍のときは、企業のオフィス移転、縮小やリモートワークなどが増えていったと思いますが、そのときはいかがでしたか。
そのときも、正直、出荷量自体はコロナ禍も変わらず、比較的安定して推移しました。
- コロナ禍も安定的に推移したとのことですが、何か特別な対応はされたのでしょうか。
コロナ禍でも下支えになったのは、お客様がテレワーク用や会社のサーバを構築されたり、そこのネットワーク関係のところや、貸オフィス(レンタルオフィス)が増えたことで、一時的に注文が増えました。
コロナ禍で感染者が一人でも出たら工事が中止になってしまうようなセンシティブな時期もありましたが、人と人をつなぐ、人と企業、企業と企業をつなぐ、ネットワークに関しては、仕事の需要は年々増えています。
時代の変化とともに、進化する製品
ーデータ容量だけでなく、機密保持、プライバシー保護の需要も追い風に
- これまでお客様の声に耳を傾け、改善・改良をされてきたと思いますが、御社の「強み」は何でしょうか。どのようなことをしてそれを「強み」にできたのでしょうか。
20年前のインターネットの黎明期のときは、いわゆるネットというのはホームページを見たり、メールの送受信ぐらいしかできませんでした。
その後、一般の方々が音楽や映画をダウロードする時代が来ました。ある程度、ネットワークの需要が高まって、現在では同時配信やライブ配信、ストリーミングの時代になり、パソコンやスマートフォンにダウンロードしなくても、常時流しっぱなしにできる、という時代です。
ネットワークの需要が更に増えていて、昨今、WEB会議も遅延なく、高音質、高画質のものを自分のパソコンの画面を会議で共有できるようになり、5年前とは大きく状況が変わり、またそこでネットワークに対する信頼性が更に高まってきました。
今までは容量が重視されてきましたが、今では機密保持やプライバシーということも考えて、信頼性の高い日本企業のネットワーク製品が売れるようになったことも追い風になっていると思います。
環境の変化としては、ストリーミングやWEB会議、データ共有を重視して用途が増え、高品質、より当社の製品が好まれる時代になってきていると思います。
- WEB会議やストリーミングの時代になったことで速度がより速く、データ容量が大きいものを送れるものが求められているということですね。
あとは落ちないことも大事ですね。それに耐えうるLANケーブルを作っていく必要があります。5年前と比べると、規格がワンランク上がって、一番下の規格がどんどんなくなってきたりもしているので、やはり容量が増えることによって、1本のケーブルを10本にして売るよりは、10倍の能力を持つケーブルを1本引いた方がお客様にとっても安上がりです。
本当は10本売れるところ、1本だと売り上げは減りますが、需要が10倍に増えているので、利益としては底上げされています。今まで引いていた製品より付加価値は高く、その製品に対する需要はその10倍になっているので会社としては利益に貢献できる製品になっています。
ファストフード店やカフェ等の無料Wi-Fiは、日本製線の製品
ー指名買いしてもらえる製品を作り、価格競争に巻き込まれない
- わたしたちの身近なところではどんな場所で使われているのでしょうか。
外からのネットワーク回線(光ケーブル)で送られてきたものを建物の中に入れるにはLANケーブルが必要になってきます。光ファイバーは分岐できないので、ハブに接続して、10本、8本のたこ足が増えるような感じです。
製品が実際に使われている場所はいろいろありますが、例えばマクドナルドやスターバックスといったファストフードやカフェの一部店舗があげられます。店舗のネットワーク回線として製品が使われていますが、皆さんにもわかりやすいもので言えば、無料Wi-Fiにも使われることがあります。店舗ではWi-Fiを2~3個置いておかないと、つながらないんです。最近だと居酒屋やファミレスでもタブレット注文に対応できるよう、Wi-Fiを複数設置されていますよね。これは注文のエラーなどが起きないようにしているのですが、こういった飲食店でも当社の製品を利用していただいています。
- 主に業務用ということで、企業との直接取引になるのでしょうか。
企業というより、通信商社や大手の工事会社と取引をしています。
- 通信技術が年々変わっていくので、それに対応して、よりニーズの高い製品を作られていると思いますが、社内で技術的な勉強会などはされていますか。
営業アシスタントの社員もカタログだけでは理解できないので、自社製品の研修会は社内で2回程度行っています。
- 新しい製品を企画して、製品になるまではどのぐらい時間がかかるのでしょうか。
試作をして製品を投入するのは短くて3か月、長くて半年ぐらいです。試作は群馬県前橋市の工場で行っています。
あと、実際に製品を使うユーザーへの質問にも答えなければならないので、ASIA Linkからご紹介いただいた元留学生のSさんは、動画の撮影や英語の字幕など作ったりしてくれています。Sさんは先日フィリピンで技術セミナーをやってくれましたし、先日は広島と福岡で立派に技術講師を務めてくれました。これから国内外を問わず活躍していただきたいです。
営業部門は本社の営業と各営業所の営業所員は年に4回ぐらい、お客様を招待してセミナーを行っているので、かなり力を入れています。いわゆる、入札、応札ではなく、指名買いをしてもらうことで価格競争に巻き込まれないですし、指名買いしてもらうためにはお客様と距離の近い関係を作っていくためにも技術セミナーを行っています。
川添社長と海外・外国でのビジネス
ー海外に出たがらない日本人と留学生について
- 以前、中国に12年間行かれていたと伺いました。それ以前はどちらにいらっしゃったんですか。
まず、アメリカに5年いてサラリーマンをやっていました。その後、日本製線に入社して1年間勉強してから、中国に12年間行きました。
- 日本と中国のお仕事で何かギャップはありましたか。
文化の違いはアメリカで経験していたので、改めてはそんなにありませんでした。約束を守ってもらうことに対して、最初は苦労がありましたが、食生活などは特に問題がありませんでした。
- 中国から日本に戻ってから変化を感じたことはありますか。
20年前と違って、日本の人があまり海外に出たがらないようになりました。それが御社(ASIA Link)を使うようになったきっかけです。長い人生で3~5年を海外で過ごすことはいい経験になると思いますよ。
ただ、企業側と社員のキャリアパスの擦り合わせは必要ですし、面接のときはそこを確認して、ミスマッチが起こらないように気を付けています。
ネットワーク業界では国内トップシェア
ー次の課題は海外マーケットへのコミット
- 日々、社長がお考えになっているのはどんなことですか。
日々の業務の中では、やはり、将来的な展望を考えることの方が多いです。今だと戦争や為替などで、これまで考えなくてよかったことなので頭が痛いです。
人が入社したり、退職したりといったことには印象に残っていますし、辞めていく社員に対しても感謝しています。
- 今後の展望について教えていただけませんか。
弊社の取引先は日系企業が多く、販路も日本マーケットが一本足なので、海外のマーケットに対してどうコミットしていくかは大きな課題です。いろいろ施策は打っていますが、一社だけではだめなので、ほかの商社や貿易会社、現地の工事屋さんやメーカーとまだまだうまくやれていないのかなと思っています。そこが課題です。
日本のマーケット、シェアはとれているので、安定はしています。ただ、少子高齢化の問題や政治的なリスクもあるので、海外に出て行かなければならないのは必達事項だと思っています。
- 社長から見た日本製線の「良さ」は何ですか。
ネットワーク関係では業界トップです。ただ、みなさんが電車で動画を見るときなど、画面がカクカクしたりすることがあると思いますので、そういった面でも課題はたくさんあります。これを良くするためには今後も需要は増え続けるでしょう。そういった先の展望も明るく、トップシェアなので、就職をしてくださるみなさんにとっては安心できる部分だと思います。
海外に対してアプローチしていくなかで、そういう人材と一緒に新しいチャレンジをしていきたいです。まず、安定があって、そこからプラスしてチャレンジできるので、働く人にとってはいい環境だと思います。
正直、うちの営業の人はそんなにストレスがないと思います。アクションをすればアクションをしただけ返ってくるし、競合に邪魔をされることもあまりありません。
工場が量を作れなかったりすることはあります。そこには多少ストレスがあるかもしれません。ただ、営業が「お客さんがいなくて困った」ということはないと思います。やりがいもありますし、売れなくて怒られるようなことはありません。外回りも少ないし、テレアポもありません。OBがコネクションをつないでくれたりもします。新人は徐々にネットワークを作っていけば問題ありません。
留学生に求めていること
ー日本製線のものづくりに対する「厳しさ」
- 留学生だからこそ、求めるものはありますか。
正直なところ、技術系の方の採用が最近できていません。ですから、留学生の方に開発、製造、設備を手伝ってもらいたいと思っています。
営業に関しては、やはり勉強してもらって、海外工場に行ってもらいたい気持ちはありますが、本人の希望を聞かなければなりません。海外の工場は2か所、営業所も2か所あるので、本人の希望とマッチングすれば、行っていただけるかなと思っています。
開発部門にいるSさんは日本語能力も高く、英語も中国語も話せるから、重宝されています。
日本人、留学生、技術系、営業系問わず、求めることは、性格が明るくて、コミュニケーションの取れる方、わからないことを質問できることが大切だと思っています。
- 日本企業は厳しいのではないかと心配されている留学生の方もいらっしゃるのですが、いかがですか。
メーカーなので、どこの日本企業も品質に関してはうるさいと思います。メーカーは自分で作っている製品に対する責任感が強いのでそこを理解してほしいと思っています。検査の厳しさはどこのメーカーも曲げられないところだと思います。ものづくりに対する厳しさは理解して、身につけていってほしいと思います。
たとえば、不良品が出ればお客様から得ていた信頼を傷つけることになります。もちろん、事故や不良はゼロにはなりませんが、きちんと真摯に取り組んだ結果なのか、ちゃらんぽらんにやった結果なのかで大きく違ってきます。
- 先日の工場見学をさせていただいた際、不良品は滅多に出ないと伺いました。
品質に対する考え方も、検査で厳しくするのではなくて、物を作る段階から厳しくしないと、結局検査ではじかれてそれがゴミになってしまいます。同じ材料を買っても、作り方によっては、無駄になってしまうことがあります。だから、作るところで厳しくしていかなければなりません。検査では不良品ゼロを目指しますが、それがものづくりの作り込みの大変さです。
もちろん、速く大量に作らないとコスト競争に負けますから、速く大量に作りつつも品質だけは絶対にある程度完璧以上を目指します。そこにジレンマを抱えているのが製造業です。「過剰品質ではないか」と疑問を持ってしまう人もいます。そういったものづくりの厳しさはあります。
- 効率良く作業を進めるため、工場内のレイアウトなども定期的に変更されているんですか。
昨今、建築資材や建築費の高騰もあり、工場を新たに建てるのは簡単なことではありません。製造する製品の見直しをして、稼働がない機械は処分して、新しい設備を導入していきます。製品構成が変わるたびに工場の製造部門が、工場内のレイアウトを見直していきます。
- 御社では部署間の異動などはあるのでしょうか。
年に1回、自己申告書という制度があり、自分自身の希望を出すことができます。本人の希望は各部門に働きかけ、総合的に判断をしていきます。わりと、本人の希望が通りやすい会社ですよ。
♦♢♦日本製線の川添社長から留学生のみなさんへのメッセージ♦♢♦
ー 最後に川添社長から、日本製線への応募を考えている留学生へのメッセージをお願いいたします。
現在、当社は、ネットワーク業界では国内トップです。安定した基盤があり、入社した場合はそこからプラスでチャレンジができる環境です。
これからは海外のマーケットへも販路を拡大していきたいと考えています。技術、製造、営業で、海外での活躍の場を求めている方はウェルカムです。また、日本国内でしっかり勉強してキャリアップしていきたい人もウェルカムです。
みなさんのキャリアパスについても、一緒に考えていきます。
日時:2023年11月24日
場所:日本製線本社
インタビュアー:ASIA Link 相馬
記事編集・構成:ASIA Link 小川
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